免疫システムの異常
多発性骨髄腫とは血液がんの一種だ。白血病、悪性リンパ腫とならんで三大血液癌と云われる。その中でも多発性骨髄腫はもっとも発症率が低い。最近の統計では10万人あたり4,5人だそうだ。女性より男性が多く、年齢層は50代以上が多い。そしてとても困ったことに、この病気は発症原因がほとんど分かってないそうだ。それ故か従来は治療薬も少なく、放射線治療も難しく、骨髄移植手術も白血病に比べて成功率が低かったようだ。10年以上前までは3年生存率が50%以下だったそうだ。いったいこの病気の正体はなんなのか? 医師から病気の概要を何度も聞いたが、結論から言うとサッパリ分からない。私は学生時代からおもいっきり文化系だったので、生物、化学の知識はほとんどない。でもできるだけ整理してみよう。血液癌とは骨髄の中にある「造血幹細胞」が癌化したものだ。そもそも骨髄は骨や血液を作る製造工場だ。ここのラインがおかしくなると、体に様々な不具合が生じる。私達の体には外部からの敵の侵入を防ぐ、様々な免疫システムが備わっている。私のような素人でもわかるのは白血球だ。さらに白血球には仲間がいる。その中でも重要なのはリンパ球だ。そしてリンパ球にも様々な同胞がいて、多発性骨髄腫にとって重要なメンバーは「形質細胞」と言われる。この形質細胞は「免疫グロブリン」というタンパク質の一種を排出する。このタンパク質も五種類の仲間がいて、IgGとかIgMなど名付けられている。IgGは最近のコロナ騒ぎでも時々取り上げられるので、聞いた方もおられるかもしれない。1個の形質細胞は1種の免疫グロブリンを産出するが、骨髄腫の場合は癌化した形質細胞がある特定の免疫グロブリンを大量に増やしてしまう。つまり著しくバランスが崩れたシステムになるのだ。この大量の免疫グロブリンを通称「Mタンパク」と言う。Mタンパクが増殖すると様々な症状がでる。具体的には貧血、骨の溶融、激しい痛み、免疫力の低下、そして各臓器を蝕んでいく。まさに私が経験した症状だ。ICUからかろうじて救出された私は、重症患者の入る監察室でさらに苦しい闘病をつづけることになる・・・・
筆者の運営サイト 日本温泉ネットワーク | スマート温泉ネット(スマホ版)