多発性骨髄腫の治療 その4

サリドマイドは悪魔の薬と言われる。この薬はもともと西ドイツで鎮静・催眠薬として開発された。研究段階では”てんかん”の薬を目指していたとも云われる。そして1950年代から1960年代にかけて世界40か国以上で承認販売された。日本でも大日本製薬から睡眠・鎮静剤「イソミン錠」と胃腸薬「プロバンM錠」として販売された。産婦人科ではこの薬が妊娠初期の”つわり”を抑える効果があるということで、妊婦に処方された。ところが、1961年に西ドイツの医師であるレンツ博士がこの薬の催奇形性について警告を出す。その後、世界中で次々と奇形児や死産の報告が相次ぎ、世界的大薬害事件となっていく。訴訟も数々起こされた。日本の被害者は現在でも300余名認定されている。ドイツでは日本の約10倍の被害者がいるそうだ。この結果、この薬は悪魔の薬として深く認識された。ところが、1965年にハンセン病に効果があると報告され、さらに1999年になって多発性骨髄腫に効果があるとして再び脚光を浴びることになる。そこで欧米では2000年ころから多発性骨髄腫の薬として次々と再認可された。しかし、日本は慎重だった。サリドマイド被害者団体では絶対に再認可するべきではないとの意見もある。一方、「骨髄腫患者の会」は再認可にむけて国に陳情を行った。一部、暫定的に医師の管理の元、個人輸入を行った。しかし個人輸入では薬の乱用につながる恐れがある。そこで患者の会とサリドマイド被害者団体と厚生労働省の間で話し合いを重ね、ついに2008年に「厳重な管理」を条件に再認可にこぎつけることになった。私は今この薬を使っている。正確にはサリドマイド誘導体「レナリドミド(商品名:レブラミド)」という薬だ。次回はこの薬の効果と副作用について、あくまでも私の場合だが、報告したいと思う。

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